今年7月6日、カナダ西部のブリティッシュコロンビア州で深刻な山火事が発生。
その火の手は同日夜、小さな町の郊外で牧場を営むリン・ランドリーさんのところにも迫ってきました。
昼間は煙がみえる程度で、消防用水も使えたため様子を見ていたのですが、夜になってそれが止まり、炎が目前に迫ってきたのだといいます。
夫婦で牧場を営むリン・ランドリーさん。
ところが90匹もの羊たちと牧羊犬はまだ牧場に残されたまま。消防用水も使えなくなった今、これ以上ここにいては危ない。
彼女は夫と考えに考え、そして羊たちと牧羊犬のタッドとソフィーを残し牧場を立ち去るという苦渋の決断をしたのです。
ランドリーさんは、彼女の犬たちは何があろうとも決して自分たちの仕事を放棄しないことを知っていたのです。
家畜を守る性質を持つマレンマ・シープドッグの犬たちは、自分たちが動ける間は守るべき羊たちを離れて逃げることはまずないといいます。
羊たちは90匹もいたが、2匹に任せるしかありませんでした。
避難する際に、火災から逃れて家に戻ってくるであろう2匹のためにおよそ16kgのドッグフードを置き、2匹の無事を祈りながら車で立ち去りました。
その山火事は、この地域で過去最悪のものとなり、翌日には非常事態宣言が出され、避難生活は思いのほか長引くことになりました。
ランドリーさんは2匹が心配で、帰宅の申請を出し続けたが許可が降りることはありませんでした。
時折家畜に水を飲ませるために湖につながる道のゲートが開くものの、それはほんのわずかな時間で、家に戻って様子をみるほどの時間はありません。
結局彼らは20日間も帰ることができなかったのです。
火災がある程度収まり、ランドリーさんはやっと牧場に戻ることができました。
頭上では残り火を消すため、鎮火用の湖水を集めるヘリコプターが忙しそうに飛んでいます。
気の毒なことに隣家は焼失。しかし、幸いにもランドリーさんの家は無事でした。そして、彼女が牧場に出てみると、そこには驚くべき光景があったのです。
そこには、いつものように草原にたたずむタッドとソフィーの姿がありました。2匹は羊たちを守りながら無事にこの火災を乗り切ったのです。
20日ぶりの再会。ソフィーとタッドはランドリーさんに気づくと、うれしそうにピッタリと身を寄せてきました。
2匹の白い毛はすっかり汚れて黒ずんでいましたが、怪我などはしていませんでした。
羊たちを数えると、年老いていた1匹は見当たりませんでしたが、他は全員無事。
彼女はまず愛犬が生きていてくれたこと、そして素晴らしい仕事ぶりに感嘆し、心から感謝しました。
「ソフィーとタッドは山火事だけでなく、熊やコヨーテから羊たちを守ってくれました。2匹がいなければ羊たちは生き延びることが叶わなかったでしょう」
ランドリーさんはお手柄の2匹に大好物の犬用ステーキをごちそうし、ぎゅっと抱きしめ、いつまでも撫で続けました。
そして仕事を投げ出さずに火災を生き抜いた素晴らしい愛犬の姿ををフェイスブックでシェアし、「私たちの泥だらけの美しい犬」「誇り高き犬たち」とコメント。
2匹は現在、動物の英雄を称える賞の候補に上がっています。
参照元:dailymail