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休日の家族連れでにぎわうペットショップ。複合型レジャー施設の一角やホームセンタターにもペットコーナーを併設してあるところが多いですよね。小さく区切られた透明のショーケースには様々な人気犬種の可愛い子犬たちが並べられています。子犬たちの愛らしい仕草に、ついつい足を止めて見入ってしまうことも多いではないでしょうか。でも、ショーケースにいるのはいつも小さな子犬ばかり。この沢山の子犬はどこからやってきたのでしょうか…。
その謎が明らかにされたのが『子犬工場 いのちが商品にされる場所』(大岳美帆/WAVE出版)です。この本では劣悪な環境で、ただ子犬をうむだけの道具として扱われる繁殖犬の実態とその悲惨さを訴えています。
保護シェルターにいる犬の正体「子犬が作られる場所」パピーミルとは?
みなさんは繁殖犬と呼ばれる犬のことをご存じでしょうか。繁殖犬とは子犬をうむために飼われているお母さん犬やお父さん犬のことです。通常、犬を繁殖させる際には、犬種ごとの特徴や性質のほかにも、栄養学、遺伝学など様々な知識が必要になってきます。こうした知識にもとづいて計画的に子犬をうませているのが本来のブリーダーで、「シリアスブリーダー」と呼ばれています。子犬をうんで育てている人たちといったらこの「シリアスブリーダー」思い浮かべている人がほとんどではないでしょうか。でも、この「シリアスブリーダー」の育てた子犬がペットショップに並ぶことはまずありえません。「シリアスブリーダー」は必ず育てた子犬を大切に扱ってくれそうな方だけに直接譲るというのです。ではペットショップにいる子犬たちは誰が育てているのでしょうか。
その答えが、工場で商品を大量生産するように子犬を大量にうませている「パピーミル業者」です。「パピー」というのは子犬のことで、「ミル」が工場、つまり「子犬生産工場」となります。パピーミルでは人気がある犬種の繁殖犬を何十頭も飼っていて、特別な知識も愛着もないままに、繁殖犬たちに子犬をどんどんうませています。実は子犬を繁殖するためには特別な試験も資格も必要なく、役所で書類を提出するだけで繁殖をはじめられるのです。そのためただお金儲けのためだけに犬を繁殖する人が増えてしまったのです。パピーミル以外にも「大量生産」はしないものの趣味やお小づかい稼ぎが目的のブリーダーなどがいます。
現在、動物保護団体の保護シェルターにいるほとんどの犬が、こうした繁殖犬であるといわれています。目の見えない犬、耳の聞こえない犬、片足のない犬、薄汚れて毛が絡みぼろぞうきんのようにみすぼらしい姿の純血腫の犬たちがそこには多く存在します。いったいどうしてこのような状態になったのでしょうか。
劣悪な環境で「子供をうむ道具」として扱われる悲惨な繁殖犬の生活
繁殖犬はその多くがそまつなプレハブ小屋などで多頭飼いされています。そして狭いケージに押し込まれたまま、繁殖期がくるたびに子犬をうむことを強要されます。パピーミルは何十頭という犬を1人、もしくは数人で管理することが多いため、繁殖犬のケージには常に糞尿が放置され、病気になっても、けがをしても、治療されることはまずありません。パピーミルに必要なのは可愛い子犬であり、売り物ではない繁殖犬にお金や手間をかけることはしないのです。こうしてケージから一歩も出ることなく死んでしまう繁殖犬が多くいます。
売れ残ったペットショップの子犬たちも同じ運命をたどることも…
一方でまだ小さなうちに母親犬と引き離された子犬たちは生後45日が過ぎると「ペットオークション」という市場で競りにかけられます。移動用の小さなケージや段ボールに入れられて長時間移動するために、体が弱り死んでしまうことも多いといいます。この本によると2014年度には市場やペットショップへの移動中だけで2万3000頭の子犬や子猫が死んでいるそうです。こうしてなんとかペットショップにたどりついた子犬も、体を大きくしないために必要最低限のえさしか与えられない状況が続きます。それでも売れ残ってしまった場合は、その多くがペットショップを運営している会社やパピーミル、ブリーダーに繁殖用として売られていきます。子犬たちもまた、親と同じ運命をたどる可能性があるのです。
負の連鎖を断ち切るために必要なこととは?
現在アメリカのいくつかの都市では、すでにペットショップで犬や猫を売ることが禁止されています。これは、ペットを飼いたいと思う人以上にパピーミルで生産されるペットの数が圧倒的に多く、殺処分されるペットの数があまりに多かったためです。そして、殺処分を減らすためには売られる犬や猫の数を減らせばいいという結論に達しました。現在生体販売が禁止されている都市では、ペットが欲しい人はシリアスブリーダーか「アニマルシェルター」といわれる動物保護施設にいきます。
そしてこの日本でも、現在殺処分される犬、悲惨 な繁殖犬を生み出さないための活動を続けている人たちがいます。この本を読むことで、ペットショップで売られる可愛い子犬の陰に隠された繁殖犬の悲劇を、1人でも多くの人に知ってもらいたいと思います。
文=朝倉志保
参照元:ダ・ヴィンチニュース
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