アメリカ西部のユタ州で暮らすタウニー・コートさん家族は、10歳になるメスのボクサー犬「ゾーイ」と暮らしていました。
幼い子どもたちもゾーイと遊ぶ時間を楽しみにしていたのですが、2016年の秋にゾーイは発作を起こし始めるようになります。
このとき家族は「きっとゾーイは癌になり、少しずつ死に近づいている」と考えていました。
ちょうど時を同じくして、家族に様々な不幸が重なります。タウニーさんの夫は生活苦から銀行強盗を行い刑務所に収監されたのです。
家族は住む家を失い、愛犬のゾーイは病気になり、タウニーさんや子どもたちの心は完全に折れてしまいました。
11歳になる息子のジャクソン君はメディアの取材に対して、「ゾーイは僕のベストフレンドだったから」と、良き相棒として暮らしてきたゾーイを抱きしめながら毎晩眠っていた、と話しています。
2016年11月19日、タウニーさんは自分の父親のラリーさんに「ファーミントンのベイビュー動物病院に連れて行って安楽死させてください」と頼みました。
ラリーさんは動物病院にゾーイを連れて行き、安楽死の手続きを済ませ215ドル(約2万3千円)を支払ったのです。
そして、その後。
ゾーイがこの世からいなくなってから半年後、心が壊れてしまった息子のために再びボクサー犬を飼うことにします。
オンラインで検索していたところ、ボクサー犬を専門に保護する「ボクサータウンレスキュー・オブユタ」にたどり着きました。
そしてタウニーさんは目を疑うような1枚の写真を目撃することになるのです。
そこには、ゾーイにそっくりなボクサー犬が掲載されていました。「あり得ない」と、自分がどうかしてしまったのだと思いながらも写真をクリックして拡大したところ、「なんてこと、この犬はゾーイだわ!」と、間違いなくゾーイであることを確認したと言います。
地元ユタ州のテレビ局「KSL-TV」は、ゾーイを安楽死させたはずのスマート獣医にインタビューをしました。
スマート獣医はこう話します。
「ゾーイを診断した結果、まだ何年も生きることができることや、安楽死させる必要はないとラリーさんに伝えました。しかし、コート家族とのやりとりから、彼らが犬を手放したがっていることがわかりました」
スマート獣医はゾーイを救うための選択肢として、外科手術や投薬ができること、さらには「何もしない」という選択もあることを伝え、とにかく命を救う方向で説得しましたそうです。
さらに、インタビュアーの問いかけに「彼は繰り返し安楽死を希望していました」と語りました。
ラリーさんから良い返事が得られなかった獣医は自らの判断を優先し、ゾーイ安楽死をさせずに「ボクサータウンレスキュー・オブユタ」に救助の連絡を入れたのです。
そして、その後のゾーイとタウニーさん家族は。
一方のラリーさんはそう言った説明は受けていない、と獣医の発言を否定しました。
ユタ州の獣医評議会は、「ペットは所有者の財産に分類されており、私たちは所有者の意向に従う義務があります。懲戒処分を検討しなければいけない事例」と発言していますが、今のところ懲戒処分に関する正式な訴状は提出されていません。
最終的にゾーイは家族の元に戻されたのです。
なんともすっきりしない話ではありますが、スマート獣医の判断によってゾーイは今も生きているのです。
参照元:wric